大相続時代に於ける相続共有不動産の問題解決コンサルティングについて

2025.12.01 | 書籍・研究報告書

研 究 報 告 書

 

不動産コンサルティングマスター登録番号:(5)第020054号

大澤 義幸

 

大相続時代に於ける相続共有不動産の問題と、問題解決コンサルティングについての事例研究報告について論述します。

*文中の当社とは、私が代表を務める株式会社大澤都市開発を示します。

 

1.相続不動産に於ける2025年問題について

来年、2025年は、1947年から1949年に生まれた団塊世代約800万人が後期高齢者(75歳以上)になることから生じる、社会全体の大きな問題です。

2025年を境に、日本は「超高齢化社会」の真っただ中に突入し、さらに「大相続時代」とも呼ばれる相続件数の急増期を迎えます。

2025年問題のひとつである、「大相続時代」と呼ばれる相続の増加は、特に大きな課題です。

団塊世代の高齢化に伴い、相続件数が急増することが予想されています。

その結果、遺産分割協議で親族間の意見が対立するなど、トラブルが発生するケースも増えると考えられます。

また、長寿化が進む中で、認知症患者の増加も懸念されています。

認知症を患うと、相続手続きに必要な判断能力が低下し、遺言書の作成や生前贈与が難しくなることがあります。

加えて、2015年に相続税法が改正され、基礎控除額が引き下げられた結果、相続税の課税対象となる家庭が増加しました。

これにより、従来は非課税だった家庭でも、相続税の支払いが必要となるケースが増えています。

特に、遺産に不動産を含む場合、相続人が納税資金を用意できず、トラブルに発展することも少なくありません。

 

2.相続共有不動産の紛争について

相続共有不動産は、複数名が共有していることから、所有者のそれぞれの意向やタイミングが合わないことが原因で、
さまざまな紛争問題を発生させています。

例えば、売却して収入を得たい所有者と、賃貸物件として収益を得たい所有者、自宅として利用を続けたい所有者、
子どもに相続したい所有者等、様々な意志の相違が起こるためです。

また、不動産は、共有持分では、単独での処分、収益が難しく、それにより、金融機関の担保評価が低い。

つまり、完全なる所有権、持分100%の流通市場しか無いことが、所有者間紛争の一因ともなっています。

共有不動産の共有状態の解消については、まず、相続人間で話し合いをすることになり、

話し合いが行き詰まった際には、各相続人が弁護士を立て、調停、共有物分割訴訟という裁判手続きが取られることになります。

 

3.相続共有不動産の紛争リスク回避コンサルティングについて

当社が、こういった相談を受けるのは、税理士、弁護士、司法書士、不動産仲介業者、相続人本人等、多岐にわたっています。

実際に、紛争関係になった相続人間の問題解決は、弁護士による法的解決が代表的です。

我々、不動産コンサルティングマスターが、こういった紛争に入る前、
または、将来、紛争が起きるリスクについて相談を受けた場合、弁護士とは違う提案が可能です。

具体的には、共有不動産に於ける法的判断だけでなく、共有不動産の問題である、
持分単独では、収益、処分が難しいこと。また、共有不動産の持分を担保に資金調達が難しいこと。

つまり、現金化し難い、現金を得ることが困難な、資産価値が著しく低いこと。

この根本的な問題を解決します。

共有不動産の価値を上げるには、

  • ・共有状態を解消する。
  • ・弁護士とは違う方法、分割訴訟ではなく、保有したい共有者に対して、売りたい共有者の持分買取資金を調達することである。
    当然、最適用途に応じた、不動産利用計画を立て、有利な資金調達をサポートする。

 

因みに、紛争の初期段階では、弁護士には、いきなり依頼して、兄弟間でもめたくない、というニーズは、多くあります。

  • ・共有者が、数十名以上と言った場合で、全員の合意形成は困難である場合は、当社で持分を買取り、当社自身が当事者となり、
    共有財産分割訴訟の判決による持分買取資金提供により、共有者全員に、持分配分金を分配することが出来る。
  • ・共有状態を維持して収益を上げ、持分に応じて分配する。

 

⑴ 自宅、自前店舗利用をしている状況の場合、遠隔地にいる等、他の共有者は売却したいが、居住、商売をしている共有者は売りたくない。
そういう場合は、売りたい方の持分を買取り、持分割合に応じて、居住、商売の共有者から賃料を得る、という解決方法もある。

⑵ 居住、商売をしている方が、資金需要があり、売りたいが、そのまま居住したい、
商売を継続したいという問題には、持分買取り+リースバックで解決する方法があります。

 

4.最困難当社事例解説

事例物件は、関西エリアの主要駅から徒歩8分の好立地にある、1400坪の溜池です。

昭和27年に、地域の農民15名で所有権保存登記をされた物件でした。買取契約は、令和6年5月から開始しました。

相続登記をされている方は、15名中3名で、その内2名は、農業を継続されており、それぞれ、農会長、水利組合長を務められています。

もう一人は農業を止められ、その地域にお住まいの方です。

現在の相続人を、登記名義人、地域の方々にヒアリングして、約15分の3の契約を交わした時点で、契約者には、司法書士を紹介して、
現在の相続人調査を依頼。商談が進まない、全く、居場所が分からない相続人については、当社から顧問弁護士に調査依頼しました。

調査期間、3か月を経て判明したのが、共有者総数は、114名であること。その内2名は海外に転居され、現時点では所在地不明という状態です。

令和6年9月に、顧問弁護士より、当社が持分全てを買取り、造成宅地開発する計画で、共有財産分割訴訟を行い旨を案内しております。

相続人数名から、裁判の内容、受け取れる予定金額、登記手続き等の、問い合わせがありましたが、反対者はいませんでした。

農業従事者の方には、耕作畑に井戸の設置工事を提案し、農業継続できるように配慮します。

また、この溜池は、調整池機能、防火水槽機能はどちらも設置不要でありますので、埋立による問題は有りあせん。

逆に、子供の転落危険性、大雨決壊リスクがあり、当社が共有持分を全部買取り、埋立て、宅地造成することにより、
安心安全な街づくりを実現することになります。

 

5.相続共有不動産問題と不動産コンサルティングマスターの社会的責任について。

所有者間で、共有持分についての話し合いがあり、この話し合いが不調になり、所有者が、共有物分割訴訟を起こす。

話し合いの不調の原因は、前述した通りですが、訴訟になるのは、所有者同士の話し合いが不調となった場合、
現状では、次の手段が訴訟となっているからです。

我々、不動産コンサルティングマスターとしましては、この所有者間の問題に於いて、

訴訟に至る前に、弁護士、不動産鑑定士、税理士等、各分野の専門家と問題解決チームを組み、各種法的判断だけでなく、各所有者の意向も聞き、

各所有者各々が満足する様に、総合的に問題を解決に取り組む。

これこそが、我々、不動産コンサルティングマスターが果たすべき、社会的責任であると考えます。

 

以上