経営危機を乗り越え、孫への事業承継を実現した経営者の勇気ある決断 その1

2024.05.07 | ブログ 事例紹介

経営の岐路に立たされた中小企業経営者が直面する最大の課題の一つは、負債の返済です。特に、不動産売却という選択肢は、理想的な価格での売却が難しく、多くの場合、買手の提示価格で売却せざるを得ないのが現実です。

しかし、借金を背負ったまま事業承継を諦め、会社を閉じることは本当に避けられないのでしょうか?本記事では、3億円の借金を抱えながらも、事業承継を孫に成功させた経営者の事例をご紹介します。


社長交代の難しさと中小企業の現実

社長交代

事業が不振に陥った際、企業の立て直しには根本的な変革が求められます。企業は常に努力を続けなければ、赤字に陥るリスクを抱えています。

固定費は毎月発生しますが、売上は不確定な要素です。企業が存続する限り、支出はゼロにはなりませんが、売上がゼロになることは珍しくありません。

さらに、金融機関や従業員などのステークホルダーは、企業の支出増加を望む傾向にあります。

金融機関はより多くの融資を行いたがり、従業員はより高い給与を求めます。

このため、経営者は意識的にコスト削減を行わなければ、企業の財務状況は急速に悪化し、赤字に転落する可能性があります。

事業の再建には、経営トップの交代が不可欠です。トップの思考や行動が変わらなければ、いかに経営改革を掲げても、結局は同じ道を歩むことになります。

大企業では、経営が傾くと有能な人材を登用することでトップを交代させますが、後継者不足に悩む中小企業では、このような対策はほぼ不可能です。


遊休地の売却による経営立て直しと事業承継の成功例

長年の事業運営により、利用されなくなった土地が遊休地となることは珍しくありません。ここでは、そうした状況を乗り越えた造園業者の事例を紹介します。

40年以上造園業を営んできたAさんは、経営が好調だった時期に土地を購入し、植木の保管場所として利用していました。しかし、庭造りへの関心が薄れるにつれ、売上は下降しました。

運転資金の融資を受けた結果、負債は3億円に膨れ上がりましたが、売上の減少により植木の在庫を減らす必要に迫られました。

経営不振に陥った中、かつて購入した土地は、現在では使い道のない遊休地となっていました。

負債が3億円に達すると、返済だけで毎月435万円(元本360万円+金利75万円)の負担が生じます。毎月の粗利がこれを上回らなければ、キャッシュフローは維持できません。

このような構造的な経営不振は、造園業者にとって厳しい状況です。

Aさんの息子は不透明な将来を理由に事業継承を拒否しましたが、アルバイト感覚で手伝っていた孫が後を継ぐことになりました。

Aさんは遊休地を売却し、負債を返済する決断をしました。これは、将来の使い道がない土地であったため、賢明な選択でした。

しかし、実現には障害がありました。取引銀行が遊休地に設定していた抵当権の解除に難色を示しました。

Aさんは「売却して負債を返済するために抵当権を解除してほしい」と要求しましたが、銀行は容易に同意しませんでした。

この問題を解決するため、私は知人を通じてAさんから相談を受け、遊休地に相場より高い2億6000万円の価格を提示しました。宅地開発の可能性を見込んでのことでした。

 

以下、次回に続きます。