中小企業経営者のための老後破産回避戦略 その3

2024.05.24 | ブログ 事例紹介

前回のつづきです。

経営の難局に立ち向かう中小企業の経営者たちは、しばしば自らの将来について深刻な懸念を抱えています。

個人保証による負債のリスク、廃業の遅れによる倒産の可能性、そしてそれに伴う財産の喪失は、多くの経営者が直面する現実です。

しかし、このような状況にあっても、経営者が取るべき賢明なステップと、最悪のシナリオを回避するための戦略が存在します。


財産を失うリスクとその対策

中小企業の経営者が会社の負債に対して個人保証をしているケースは珍しくありません。

事業が倒産に至った場合、事業用資産の売却から得られる資金だけでは返済が不十分で、残りの負債は経営者個人が負担することになります。

これにより、自宅や自家用車、貴金属類、家財など、換金可能な財産を処分しなければならない状況に追い込まれることがあります。

廃墟

民事執行法による保護とは

民事執行法第百三十一条により、経営者の生活に欠かせない最低限の物品は差押えから保護されています。

これには衣服、寝具、家具、台所用具、食料、燃料など、生活に必要な基本的な物品が含まれます。

しかし、これらを除くほとんどの財産は、負債の返済のために差押えられる可能性があります。

【差押禁止動産】

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料

三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類

十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物

十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの

十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物

十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品


「最悪の老後」を避けるために

 

経営不振が続くと、多額の負債を抱えてしまうことは避けられません。

運転資金の融資を受けることが黄色信号となり、2期連続の赤字決算は事業の先行きに赤信号を灯します。

多くの経営者は危機を感じつつも、さまざまな事情から廃業を決断できずにいます。

しかし、負債と資産の状況を正確に把握し、適切なタイミングで行動を起こすことで、多くの問題を解消することが可能です。

不動産の高値売却など、資産の有効活用により、借金を完済し、取引先や保証人に迷惑をかけずに済む方法もあります。

従業員や家族に対しても、適切な退職金を支払うことができ、廃業に反対する家族の考えを変えることも可能です。

経営者が直面する困難は多大ですが、適切な戦略と決断により、最悪のシナリオを回避し、安定した老後を迎えることができます。

経営者自身の未来だけでなく、従業員や家族の未来にも責任を持ち、賢明な選択をすることが求められています。

経営の舵取りは容易ではありませんが、可能性は常に存在します。経営者はその可能性を見極め、最良の道を選ぶことが大切です。

 

このブログは、経営者が直面する困難に対する理解を深め、将来に向けた具体的なステップを考えるための一助となることを願っています。

経営の危機を乗り越え、安定した未来を築くために、今日からできることを始めましょう。